《第6話 》生まれた後に、家を出た両親の話

《第6話 》生まれた後に、家を出た両親の話

私の両親のことを、ここで書いておこうと思います。

母は、実家の旅館の長女でした。
父は、その旅館で働いていた料理人です。

今なら珍しい話ではないかもしれませんが、
当時としては、当面歓迎される関係ではありませんでした。

特に、祖父の反対は強かったと聞きます。
(昔の料理人は流れ物が多くて職人気質が激しかったのです)

旅館を継ぐ家長女。
そこに居る料理人。

立場や役割、家の都合

私が生まれたあと、
両親は実家を出ました。

かけおちです。

大げさな言葉に聞こえるかも知れませんが、
実際には、
身一つで場所を変えなかったしかなかった、今の
話だったのだと思います。

引っ越し先は、佐世保でした。

旅館のある松浦を離れ、
家業からも距離を置いて、
新しい生活を始めました。

私自身、その時の記憶はかすかに残ってます。
ただ、
この事実は、後になって、
静かに聞こえてきます。

代々続いてきた家。
名前が残る歴史。
商売をやめない前提。

その流れから、
両親は一度、外に出た。

継ぐことよりも、
一緒に生きることを選んだ。

この選択は、
祖川家の歴史の中では、
例外だったのかもしれません。

私は、
守られた家に生まれ、
そのあと、
その家を離れる選択の結果として育ちました。

この二つの矛盾した要素が、
私の中に、同時に存在しています。

「続ける家」と
「暫定決断」。

後になって振り返ってみると、
私が人生の中で
何度も「一度壊してから考える」ような選択をしてきた理由は、
ここにあったのかもしれない。

この時点では、
まだ誰も、
その後に起こることは知りません。

ただ、
家を出るという決断が、
確かに一度、終わっていた。

ただいまは、
事実として、
私の人生の最初の背景になっています。

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